一日がかり

 「撮り鉄」なんて、自分には絶対無理だろうな、と思っていた。かつて私にとって列車の写真というのは「乗るついでに」撮るものだったし、撮るためだけに時間を使うのはもったいない、という思いがあった。しかし、人間とは変わるものである。

 特段自慢できるような写真ではない。しかし、これを撮るためだけに2時間半かけて登山し、1時間半かけて下山してきた。登山の玄関は中央本線梁川駅だから、自宅からは一日がかりの行程だ。この場所(倉岳山、標高990メートル)からの写真は以前、雑誌にも紹介されたことがある。
 もっと空気が澄んでいれば、というのが正直なところだが、贅沢を言っていられる季節ではない。今まで半年以上、都合がつかず行けなかった。行けるときに行っておかなければ後悔すると思ったから、誇張でなく何リットルもの汗を流して山に登った。体力の衰えを痛感したが、それを補って余りある充実感を得られた。